2012年12月25日火曜日

「性」に対する考え方への影響

当時世界の覇者たるイギリスは産業革命をなしとげ、続くビクトリア朝時代(一八三七~一九〇一年)には、のちに「ビクトリアンーウーマン」と呼ばれる、典型的な近代型性差別役割分業観による女性像を作り上げていた。すなわち、中流以上の女性は働くことを恥じ、結婚して夫に慎ましくつかえ、子どもに生きがいを見出す生き方こそ、女の幸せの理想像と考えられるようになったのである。

甲斐性のない貧しい男と結婚した女性は、賃金労働者として戸外で働かねばならず、日焼けや肌あれ、手あれなどは、生活力のある男に求婚されなかった(女性的魅力に欠ける)女性に課せられた、不幸な運命の象徴とされた。何よりも生活力があり、ふところの豊かな男が、男らしい男性とされ、そういう男に選んでもらえる「いい女」の条件をそなえようと女性たちはやっきになった。

コルセットによってひどく細めたウエスト(なよやかさを強調)、反対に骨入りペチコートで、ヒップを大きく強調したスカート(出産能力の誇示)、ひたすら貞淑に夫たちにつかえ、ヒステリックな声やどなり声などはタブーであった。「不満」には、卒倒や気絶という表現しか許されていなかった(スティーヴンーカーン著、喜多迅鷹他訳『肉体の文化史』法政大学出版局などにくわしい)。

それらは一七世紀後半から芽生え、一八世紀前半に本格化した「動物の発生」についての議論が、重要な影響を与えていると思われる。顕微鏡の発達や生理学的発生理論の体系化などから、精子と卵子二八二八年、ベアによる哺乳類の卵発見)の性質や受胎における状況などがわかり始めた。精子は男性より出で、女性の体内で活発に動きまわり、他の精子と競争して卵子を獲得するもの、卵子は女性の身体の中でほとんど動かず、静かにじっと精子を待っていて精子に獲得されるものという、あらかたわかった図式は、そのまま短絡的にその持ち主たちに適用された。男性は精子と同様、活発で闘争的で積極的性質を持ち、女性は卵子と同様、静的で受動的で忍耐強い性質を持つもの、いや持つべきものと解釈され、これが男女の「らしさ」へと適用されたのである。

そのうえ、今日では信じられないが、当時ヨーロッパでは、ダーウィンの進化論に強く影響を受けたヘッケルが「個体発生は系統発生をくりかえす」という「反復説」を唱え、それが広く受け入れられていたことも、当時の女性観の形成に深く関係していたと思われる。つまり、近代人は原始の人々より優秀(進化しているから)であるという論法のもと、「成人女性の頭骨は成人男性の頭骨より子どもの頭骨に似ているという形態学上の事実」と「子どもは生ける原始人であるから成人女性もそうにちがいない」(スティーブン・TJ・グールド著『系統発生と個体発生』工作舎)という推論は、女性は男性より劣った存在であることの根拠となった。

日本における性はかくすべきものという現代の考え方は、明治の西欧化政策以来のものである。肌身は人目にさらすべきではなくなり、上半身裸をさらし、片肌ぬいで労働するのが当たり前であった男性たちは、夏でも着物の袖に手を通さねばならなくなり、ゆるくまといつけて、乳房がみえかくれしていた女性の身体も、きっちり着物の衿もとを合わせ、胸高にかびがしめられるようになった。もちろん混浴も禁止された。


2012年9月3日月曜日

あたたかな美とつめたい美

春の日に蝶がとんでいるのをみて、私たちは「たのしく舞う蝶」とおもう。この「たのしさ」のつよさは私たちの心の明るさのつよさに応じて濃淡いろいろになれるものである。また冬景色に向って、ふつうの状態の人は『さびしい景色』と感情移入するわけだが、「さびしさ」がつのって「冬の神のまえに万物がひれふしている」と感じるならば、これも感情移入のたかまりにちがいない。

したかってたかまりはなにも快活な感情の方角へのたかまりとかぎったものではなく、「わびしさ」や「あわれ」のような悲哀的感情移入は、かなしみにみちた人の方が深くあじわえるのである。けれどもはつらつとした感情移入がもっともきわだってあらわれるのは、実際には明るい美しい美の方向への感入で、生命感がゆたかなよろこびの人では、詩人の心にごく短時間わきあがるような、眼のさめるような感情移入がおこる。

「私はとても幸福でした。まるでだれもかも私の幸福を見まもっていてくれるようでしたし、私の視線かまたほかの人を幸せにできる感じでした。それで私は、人々のところにいかなければたらない義務を感じました。私は下層階級のすんでいる街へいきました。みんな私を見まもってくれるものですから、右や左の人たちにいちいちあいさつをしなければならないほどでした。なかには、ほら、そこにあの方がおいでだとよびかわす人もありました。マリアさまよ、という声もしたように思います。たしかではありませんでしたが、するとたちまち涙があふれてきました。それでもやはり私はかぎりたく幸せだったのです。私をみつめるときは、けものたちさえ幸福でした。白鳥は羽根をひろげて私をいわってくれました。それから森にいぎましたが、そこで木を一本かついだ園丁にであいました。それは宜ある。まるで生命の樹のようでした」。

このように心のゆたかな人からみれば、あらゆるものが自然で、たのしげに和合し、躍動的である。気分のたかまりとともに、この人たちのなかからはながれるように自然なうごきがわきだし、人をもとめ、人と一緒に生をたのしむ友誼的現実的な態度がはっきりしている。ところがこれと似てまわりの世界が美化された意識を濃厚にもちながら、その実まるで別種の感情移入のこともある。次の二、三の例のなかからこのちがいをかぎわけられはしないだろうか。

2012年8月2日木曜日

民主党支持がつねに過半数

文化は別にビールとワインだけにみられるのではなく、ほかにも読書の習慣の有無、購読する新聞の種類、夫婦の関係のあり方、服装、居住する住宅街の種類などなど、生活のなかの多くの側面にその違いが現われてくる。もちろん宗教の違いや人種の違いなどは、決定的な影響を及ぼす。そして支持政党の違いは、宗教やアルコール飲料のように、家族が受けついできた伝統の一つだったのである。

広大なカンザス州の畑で大豆を大量回就培している農民は、夕方早々には家に戻り、マメとジャガイモと肉からなる夕食を一家そろってとるが、このような文化のなかで育った子供が、父親と異なる政党を支持するようになるとは考えにくい。

彼らの支持政党はルーズベルトの時代から民主党であり、祖父の時代にアメリカで初めて農民の協同組合制度を作りあげて、東海岸の大企業の圧力に対抗しようとしたことが、いまでも自慢げに食卓で話題になるからである。

このような人々にとっては、政党というのは一つの心のよりどころとなっているといってまい。自分たちの置かれた立場と似たような境遇にある者たちが、寄り集まってつくっている一つのクラブ組織なのであり、いざとなったら天下を取って自分たちの言い分を通すことができる。

自分が本当にアメリカという国に属しているのであり、そこは民主主義の国なのだと、広大なカンザスの農地で実感できるのも、政党があるからである。このような事情を、政治学者のE・E・ロビンソンはやや皮肉をこめて次のように解説する。

政党というのは、共和党にしろ民主党にしろ、いろいろな意見の妥協のうえに成り立っている。妥協を重ねない限り、全国に通用するような政党にはなり得ないからである。しかしその結果として、もともと政党がもっていた原理や原則といったものがうしろに引っ込んでしまい、むしろ心情的ななれや親しみで、政党と有権者のつながりが保たれている。

民主党支持がつねに過半数

国民が支持する政党が両親から引きついだものであるならば、俗に言われる出世物語とは異なって、アメリカ社会は案外と安定したものなのかもしれない。少なくとも家庭に伝わる「文化」は、長期にわたって安定したものである可能性がある。

この安定性を統計的な側面から説明するのが、国民全体の政党の支持状況である。質問にたいして、自分は強力な民主党の支持者だと答えたアメリカ人は、一九五二年には二二パーセントいたが、五四年にも二二パーセント、五六年にぱ二一パーセント、六〇年には二一パーセント、七〇年には二四パーセントといった具合であった。

つまり民主党を強く支持すると答えた人間の割合は、いつでも二〇パーセントちょっとであり、年月がたってもさほど変化していないのである。

2012年8月1日水曜日

拉致問題の真相に大きな「利権」と「国賊」の影

このところ都心に出る機会が増え、帰宅難民にならないか?と心配だったので、私は太平洋上を西進しているころ、「そのまま西に向かえっ!」とTV画面に向かって”気合い”をかけていたのだが、急激に北進し始めたのが台風6号の進路で、福島原発に向かわないか?と気がかりである。しかし、実に奇妙だった。

今被災地を回避してくれた。気象予報士は「太平洋の高気圧が南下した石巻初め、原発対処に取り組んでいる福島一帯が危険になる。ところがどうだ!急に紀伊半島をかすめて南下し始め、被災地を直撃したら、地盤沈下したからだ」と原因を説明するが、その高気圧がなぜ南下したかは説明しない。

その昔、私が静浜基地でT-34操縦学生時代、接近するのか?」と気象隊長に教官が質問したことがあったが、隊長は少しも騒がず『それはわかりません。ほかに質問は?』と言ったので「質問があるわけないだろう!」と白けた雰囲気が漂ったことを思い出した。

ある方から「福島原発で放射線と戦っているUFOが、押し下げたのさ」と言われたが、そういえばチェルノブイリ事故の時もUFOが大活躍したことを思い出した。今回の台風では西日本一帯が大被害を受けた。東日本から今度は西日本へ…、とすると次は…?いずれにせよ、汚染水があふれる事態にならなくて本当に良かったと思っている。

国会では自民党の山谷議員が菅首相の北との接点、献金問題について質問したが、首相は問題の核心を避けてのらりくらりと、他人事の様な精神分裂気味の答弁に終始したから会議は止まった。今日の産経によると首相は「もしそういうこと(拉致実行犯と近い関係)があったとすれば大変申し訳ない」「団体が(拉致実行犯と)関係があることを知らなかった。そうしたことがあるのであれば、政治的なつき合いは控えたい」などと、しぶしぶ“謝罪"したようだが、謝罪すれば済むような問題ではあるまい。首相は拉致問題解決の最高責任者である。

そんな基本的なことも調べず、気にもせず、間違った行為をするような首相に国民の生命と財産を預けることはできないというべきだろう。無責任極まる。どうしてメディアはそこを追求しないのか?当時、この事件に疑問を持ったテレ朝と産経新聞の記者がスクープしたのだが、横槍を入れたのがだれか?当時の与野党を問わず、北との取引が強かったから、同胞を人身御供にして”利権”をむさぼったやつがいる!とささやかれていた事件である。

情報公開を叫ぶ「市民グループ」も拉致問題になると鳴かず飛ばず、よほど都合が悪いのだろう。こんな≪国賊≫を一掃しないと、真面目な国民が塗炭の苦しみを味わうだけである。この節電が叫ばれているさなか「頑張れ日本!」などと書いたのぼりを立てた遊戯店が繁盛しているのはその象徴に映る。

外国人からの献金を返金したという証拠の「領収書問題」だけでないはず。自らこのいかがわしい団体に出資した問題の解明もしなければならない。”なぜか”この問題に消極的であったマスコミも同様である。菅首相退陣を攻めあぐんでいるメディアは、これを突破口にして、自らも過去の清算をすべきであろう。

以下、過去の関連情報の一部をご参考までに掲載するが、菅首相の口から拉致事件の全体像が明らかになり、同胞が全員帰国する日が来ることを願っている。

2012年7月4日水曜日

東海・東南海・南海が連動した超巨大地震が襲来する可能性

8月23日、アメリカ東海岸でマグニチュード(M)5.8の地震が発生、首都ワシントンなどを中心に推定震度3-4の揺れが広い範囲を襲った。同地域でこの規模の地震は93年ぶりという。M 9.0の東日本大地震が、太平洋プレートの対岸にまで影響を及ぼした可能性も否定できない。

もちろん日本列島もいまだ余震が続き、全国各地の活断層で大地震が起きやすい状態が続いている。その前兆ともいえるのが、週プレNEWSの記事『房総半島の”磁気異常”が多発』『房総半島で方位磁石の南北が逆転する怪奇現象”磁気異常”が示す「M7首都圏直下地震」の可能性』で警告した、謎の「磁気異常」だ。現在、東京湾沿岸部と千葉県房総半島内陸部では、コンパスの針が大きく狂うという奇妙な事態が頻発している。

そして最近になって、この現象が観測され始めたという。磁気異常と地震発生の関係を研究してきた海洋学者の辻維周氏は、8月1日に駿河湾でマグニチュード6.1という地震が起きた東海地方でもこうした異常現象が東京・千葉以外でも観測されているとして、次のように警告する。

「地震発生前には、震源を取り巻く地下の岩盤に細かいクラック(ヒビ割れ)が走り、その際に放出される電磁波が地磁気に影響を及ぼします。この異常現象が観測されると、1、2年以内に岩盤で大規模な破壊(地震)が起きることがわかってきました。駿河湾沿岸から渥美半島にかけての地域で、5月以降、方位が狂い出しています。おそらく、3月11日の超巨大地震で生じた太平洋の地殻の歪みが少し遅れて伝わったのでしょう。この東海地域の磁気異常は強まるばかりです。7月前半の調査では、とうとう駿河湾各地で最大30度のズレを計測しました。これは通常ではありえない数値です」

駿河湾沖の東南海地震、紀伊半島沖の東海地震、愛知県沖の南海地震。これら3つの震源域で起きる「海溝型巨大地震」は、基本的に単独で終わらず、ほとんどが連動発生してきた。東海地方の磁気異常はその前兆だと読み取れると辻氏は言う。

「強い磁気異常は駿河湾地域だけでなく、愛知県・渥美半島先端の伊良湖岬まで広い地域で発生しています。福田港に至っては35度もズレている。明らかに、東南海地震の接近を告げています。また、7月5日に和歌山でM5.5が観測されるなど、このところ紀伊半島でも地震活動が目立ってきました。これらは南海地震の予兆と考えられます。つまり、1、2年以内に、東海・東南海・南海すべてが連動したトリプル超巨大地震が襲来する可能性があるのです」首都圏だけでなく、東海地方にまでその範囲が広がった「磁気異常」。杞憂に終わることを祈るばかりだ。

2012年6月13日水曜日

路線価:全都道府県で下落。港横浜、見えぬ未来。ビル建設、初の中断。

米国金融市場に端を発した世界的な不況が、日本の地価を押し下げた。4年ぶりの下落となった全国の平均路線価。マンションなどの販売不振が一層進んだ影響で首都圏では地価が落ち込み、販売会社や開発業者が倒産に追い込まれたり建設工事が中断する事態を招いている。一方、独自の街づくりに取り組む北海道の自治体では移り住む人が増え、路線価が上昇するという思わぬ現象も起きている。

5月末、埼玉県内の駅から徒歩12分の8階建てマンション1階に「会社更生法を申請しました」と紙が張り出された。4月に完成したが、112戸の1割以上が売れ残り「3LDK 2300万円~」と書かれた看板が立てかけられている。

入居した男性(60)は「守秘義務の念書を交わしたので詳しく言えないが、かなりの値引きがあった」と話す。しかし完売できず販売会社は破綻(はたん)。入居者の間に建物の維持・管理に対する不安が広がっている。同社が首都圏で建設中のマンションは、これ以外に約10棟あり、いずれも工事は中断している。

不動産経済研究所によると、首都圏の5月のマンション新規販売戸数は3538戸で、前年同月より19%も減った。契約率も前年同月を0・3ポイント下回る70・7%となった。不動産の価格データを提供する「東京カンテイ」(東京都)の中山登志朗上席主任研究員は「価格を下げても、郊外の物件は売れなくなった」と話す。

大型の開発工事もストップしている。横浜市の埋め立て地に広がる「みなとみらい21」。17階建てオフィスビルの建設が基礎工事を終えたところで中断している。建設を手がけていた東証2部上場の不動産会社が08年11月、金融機関の融資を受けられなくなり、破綻したためだ。約20年前に始まった一帯の開発で、工事が中断に追い込まれたのは初めて。

みなとみらい21の街づくりを企画する社団法人の担当者は「急激な景気後退が不動産業を直撃している」と危機感を募らせる。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、今年1~5月に倒産した上場企業17社のうち建設・不動産業は11社を占める。

高齢者定住で上昇-北海道・伊達

北海道伊達市。有珠(うす)山を望む内浦湾に面し「北の湘南」と呼ばれる人口約3万7000人の温暖な地方都市では、路線価が10%以上上昇した地点もある。

市の担当課によると高齢者に定住してもらう施策として、税金を投入しない民間主導で1回500円の乗り合いタクシーを導入したり食堂、共同浴場を備えた賃貸マンションを「安心ハウス」として認定したりする制度を創設。年間約2000人の転入があるという。安藤隆係長は「人口減や少子高齢化は避けて通れない。発想を変え、元気なお年寄りに定住してもらうことで活性化しようと考えた。人口増が路線価の上昇につながったのではないか」と話す。

2012年6月2日土曜日

金より急激、プラチナ値上がりのワケ

タンスの中で眠っていた宝飾品が高値につられて換金のために貴金属店に続々と持ち込まれている様子をテレビのニュースが報じていた。プラチナ(白金)が高値を追っている。金ほど派手なニュースにならないが、こちらの方が値上がりは激しい。

直近の高値は11月第2週に付けた1トロイオンス1483ドル。言うまでもなく過去最高値だ。この数年、もう天井と思われながら徐々に高値を更新してきた。

英国の貴金属会社、ジョンソン・マッセイ(ロンドン)が13日に発表した「2007年プラチナ需給の中間報告」を見ると、高値の要因は供給不足にあるようだ。中間報告によると、世界の需要は前年比6.1トン(2.9%)増の215.4トンに対し、供給は同4.1トン(2%)減の207.2トンと、8.2トンの供給不足になる見通しという。

06年は久しぶりに供給過多になったが、再び不足に転じる。最大の生産国である南アフリカの鉱山で生産障害が続いたためである。南アフリカの供給量は前年比2.1トン減の162.4トン。今年は賃金改定を巡る労働争議などのほか、鉱山での労働災害も多発し、大手鉱山で操業休止が相次いだ。

東京で記者会見した同社のレイナルド・オメーラ氏は、生産面の最大の問題として「鉱山技術者の不足」を挙げている。「10年に南アフリカでサッカーのワールド・カップが開かれるため、インフラ整備工事に技術者が取られている」とも言う。同氏が言うような一時的な要因だけなのかどうか。人材不足が南アフリカの問題であることはかねて指摘されている。

プラチナの最大の用途は自動車の排ガス触媒。131.7トンと年間需要の6割を占める。ガソリン車では価格の安いパラジウムへの代替が進んでいるが、ディーゼル車ではプラチナが欠かせない。必要不可欠な素材だけに、高値になっても需要はあまり影響を受けない。今後の排ガス規制の強化、ディーゼル車やハイブリッド車の生産増などがプラチナ需要の増加要因となるとも指摘している。

「向こう半年間で高値は1575ドルに達する可能性がある」と中間報告は予想している。脆弱(ぜいじゃく)な供給体制の下にあり、価格が上がりやすい貴金属であることは確かだ。

2012年5月30日水曜日

原油高より深刻?ガソリンスタンドの人手不足

ガソリンや灯油の店頭価格が上昇している。石油情報センターのまとめでは、レギュラーガソリンが1リットル150.2円(全国平均、11月19日時点)と1987年の調査開始以来の最高値だ。

スタンド経営者は「消費者の買い控えを招く」と需要の減少に気をもむ。だが、それ以上に深刻な問題になっているのは年末年始の帰省ラッシュを前にしたアルバイト店員の不足だ。

バイト不足はこの夏から続いている。「夏休み期間の学生バイト募集を情報誌に出したが、応募が全くなかった」。大手元売り系列の特約店経営者は嘆く。募集広告に反応がなかったのは2度目。繁忙期には普段以上の人手が必要だが、社員や既存のバイトに過剰な負担をかけるわけにはいかない。結局、苦肉の策として24時間営業の店舗の1つで、月遅れ盆のうち2日間の深夜営業をやめた。

人材大手のインテリジェンスがまとめた9月のガソリンスタンド店員の平均時給(全国)は919円だった。夏も冬も屋外で働くなど大変な仕事だが、全職種平均(975円)に比べ高いわけではない。

あるスタンド経営者は「人手を確保するために時給を上げるのは難しい」という。ガソリンや軽油などでの利益確保が厳しい中、人件費負担を増やしにくい事情があるからだ。

ではセルフ式スタンドへの業態変更は対策にならないか。資源エネルギー庁の調べでは、全国のスタンド総数が約4万5000カ所(2007年3月末)と12年連続で減少する一方、セルフ式の比率は年々上昇し現在は全体の15%程度を占めるに至っている。

店員が給油するフルサービス店はセルフ式よりも運営コストがかかる。人件費を浮かせた分を回せば、1リットル当たり数円とはいえ安いガソリンを消費者に提供できる計算だ。だが、フルサービス店のセルフ化はそう単純な話ではない。

フルサービス店は給油するためだけに人を置いているのではない。深夜・早朝に営業し、タクシーやパトカーなど業務用車両の洗車・整備を手掛ける店は意外に多い。「女性や年配の人を中心にセルフ式を嫌がるケースがある」(あるスタンド店員)との声もある。こうした店舗がセルフ化すればこれまでの収益源を放棄することになる。

地域に密着していた酒屋や家電販売店が消えていったように、バイト代も捻出(ねんしゅつ)できないようなガソリンスタンドはなくなっていく運命かもしれない。だが、スタンドには社会インフラとしての側面もある。石油業界は全国のスタンド網を維持しながら、多すぎるスタンドを減らすという矛盾する課題に取り組まなければならない。

2012年5月23日水曜日

木材全面安の中、カナダ材が逆行高

6月に改正建築基準法が施行され、住宅着工が落ち込んだため、木造住宅に使われる木材製品は全面安の様相となっている。その中でカナダ材だけは例外だ。現地業者のストライキが長引き、極端な供給不足によって需給が逼迫(ひっぱく)しており、逆行高を演じている。

カナダ材の主力品である米ツガ正角(4メートル×10.5センチ角)の国内卸価格は、現在1立方メートル当たり4万2000―4万3000円程度。1カ月前に比べ5000円程度(13%)上昇した。待遇改善などを求める現地製材業者のストライキが7月末から約3カ月にわたって続き、供給が大幅に減少したためだ。対日輸出価格も最近は1立方メートル330―350ドル程度で、ストライキ前に比べ50―70ドル上がった。

カナダ材は主に土台に使われるため、腐食やシロアリを防ぐ薬剤を注入して加工する。輸入量が急減したため、工務店など需要家の中には、一部、国産のヒノキなどほかの樹種に切り替えるケースもあったという。「輸入量は通常の半分以下になった」(土台メーカー)との声もあり、極端な品薄も懸念されている。

もっとも、国内価格の上昇は比較的緩やかだったとの見方もある。国内需要が鈍かったためだ。建築基準法の改正で住宅着工が大幅減となり、本来なら全国的に需要が盛り上がる秋需も不発となった。「需要減のおかげで国内市場もそれほど混乱せずに済んだ」(商社)との見方もある。

ストライキが終わったものの、現地ではなおフル生産には戻っていない。今後、供給量が増えれば、市況が軟化する可能性もあるが、「輸入量が通常に戻るのは来年以降」(建材商社)という。

来春には北日本の降雪地帯などを含め全国的に住宅着工が増える需要期となるほか、改正建築基準法による建築確認の遅れも解消するとみられている。「価格が大きく下がることはないのではないか」(商社)との指摘が多い。

2012年5月10日木曜日

新潟コシヒカリ反発は選挙対策効果?

安値が続いていた2007年産の新米価格が上昇に転じた。特に昨年より安く出回っていた新潟産コシヒカリが、政府の備蓄米の買い入れ拡大を契機に、上昇に向かったことで、胸をなで下ろすコメ関係者も少なくない。

コメ価格センターが12月5日に実施した入札では、新潟産一般コシヒカリの07年産が60キロ1万9609円で全量落札された。落札価格は今シーズン初の上場となった10月17日より2837円(16.9%)高く、前年同期の06年産と比べても732円(3.9%)上昇した。

07年産米の値下がりへの対策として打ち出された11月末の政府の備蓄米買い入れ入札で、新潟産一般コシヒカリ6万2000トンが全量落札され、数量確保を急ぐ卸業者の買いが集まったことを映した。

今シーズン初の上場となった07年産の新潟産一般コシヒカリの入札の落札価格は1万6772円。06年産米の初回入札の1万8854円より2082円(11%)安かった。昨年に売れ残りが発生したため、産地が慎重になり、高い価格設定を避けたわけだが、市場では「新潟ショック」として一気に広がった。

多くの産地・銘柄米は新潟産コシヒカリ価格を上限のメドにして、数百―数千円を引いて値決めしている。

一方、下限のメドとされてきた北海道産きらら397の07年産は初回入札の価格が1万3387円で、06年産の初回入札時より87円(0.65%)上昇した。価格の割に食味がいいため、3―4年前から市場で人気が高まっており値段も上昇傾向にある。

今年は上限が値下がりし、下限が値上がりしたことで、価格帯が例年以上に狭くなった。新潟コシヒカリを指標としてきた産地は狭いレンジ内で、値決めせざるを得なかった。北海道産を始め青森県産など新潟産コシヒカリに比べ割安感を売り物にしていた産地では、お値打ち感を打ち出しにくくなった。

各地の銘柄米を並べるスーパーでは、「新潟コシヒカリが安いと、消費者には他産地のコメが割高に受け止められる」(都内のスーパー)というぼやきも出てきた。

ここにきて新潟産コシヒカリが上昇に転じたことで、「ようやく価格設定に柔軟性を持たせられるようになる」(都内のスーパー)と歓迎する向きが多い。

しかし、安値で出回った新潟産コシヒカリが上昇に転じたのも、政府の備蓄米買い増しという「カンフル剤」によるもの。今年7月の参院選で惨敗した自民党による農家への選挙対策の側面が強い。需給が緩めば価格が下落するという「市場のシグナル」を農家に認識してもらい、コメの生産調整につなげようとする流れには逆行するものだ。

はからずしも新潟産コシヒカリは価格の指標だけでなく、今年の備蓄米買い入れ効果の代表格にもなった。来年、生産調整に消極的になる産地が増えてもおかしくない。

2012年4月28日土曜日

化学肥料の硫安、原油高で一転「期待の星」に

スポーツウエアなどに使うナイロン繊維の原料カプロラクタム。原油から造る化学品の一種だ。原油の歴史的な高値水準が続き、製造コストは上昇している。しかしメーカーからは「原油高の恩恵も受けている」との声が聞かれる。

カプロラクタムを造る過程では副産物として硫酸アンモニウム(硫安)が発生する。硫安は代表的な化学肥料だ。原油高騰を受けて世界的に代替燃料のバイオエタノール需要が高まり、原料となるトウモロコシなど穀物の生産が拡大。つれて肥料になる硫安も「各国から旺盛な引き合いが来るようになった」(カプロラクタム大手)。

硫安の価格は上昇著しい。アジアでは1トン170ドル、南米では280ドルほどで取引されている。昨年は100ドル程度だった。カプロラクタムの4倍近く発生する硫安はかつては事業のお荷物。各社が硫安の出てこないプロセスを研究していたほどだ。しかし今や「収益への寄与は大きい」(宇部興産)といい、バイオ燃料をきっかけとした穀物ブームにより、状況は一変した。

カプロラクタム自体は、中国でナイロン製タイヤコードの需要が増え、11月の指標価格がアジア市場で過去最高水準となった。それでも増産の動きは少ない。建設資材の高騰もあって現在、12~15万トン級のカプロラクタム製造工場を造るとしても700億円近くかかり、「投資効率が悪い」(メーカー大手)からだ。

ワイシャツなどに使うポリエステルに比べて、ナイロンは市場の伸びが小さく、原料もあまり魅力的な製品として見られていない。結果的に硫安の供給増も見込みにくく、需給逼迫(ひっぱく)は当面続きそうだ。企業のコスト押し上げ要因になる原油高だが、一方では新たなビジネスチャンスも生み出している。

2012年4月12日木曜日

液晶テレビ、人気も価格も「32型」優位に

年末商戦の目玉商品となっている液晶テレビ。家電量販店の売り場ではいくつも並んだ大画面映像が人目をひき付ける。大型化による迫力映像への驚きが消費者の購買意欲を刺激して、市場が拡大してきた。ただ、最近は32型に人気が集中する一方、40型以上の売れ行きが伸び悩んでいる。液晶パネルメーカーがテレビメーカーに販売するパネルの価格も、32型が独歩高の様相を呈している。

32型パネルの大口需要家向け価格は現在、中心値が1枚332ドル。11月より2ドル上昇し、2006年12月以来の水準を回復した。4月以降、上昇基調が続いている。一方、42型は547ドルと前月比横ばい。10月に2ドル高くなったが、その後は上昇が続かない。

パネルメーカーの間では「32型の需要が強まっているのに対し、42型以上は動きが鈍い」(韓国のメーカー)といった声が聞かれる。シャープは従来42型以上のパネルを生産していた三重県亀山第2工場でも32型の生産を始めた。自社製品向けだけでなく、他のテレビメーカーへの外販も拡大している。

量販店の担当者は「住宅事情を考慮して、40型以上は置きづらいと判断する消費者が目立っている」(ヨドバシカメラ)と話す。世界的にも「北米市場のみ46型が人気だが、新興地域なども含めて売れ筋サイズは来年以降も32型」(調査会社のディスプレイサーチ)といった見方が有力だ。

新興地域の需要は特に低価格志向が強く、コスト競争力のある台湾パネルメーカーの優位性が強まりそうだ。一方、大型のガラス基板から40型や50型以上のパネル生産を想定した大規模な設備投資に動いたシャープや韓国サムスン電子などの大手にとっては「誤算」ともなりそうだ。40型以上のパネル生産に適した大型ガラス基板から32型パネルを生産すると、効率が落ちコスト増となる。
テレビの低価格化はさらに続くとみられ、大手各社は今後、事業採算やコスト競争力を維持する上で生産計画の修正なども迫られそうだ。

2012年4月10日火曜日

スポンジチタン、上昇鈍化の舞台裏

チタン製品の原料となるスポンジチタン。航空機向け需要の増加で大幅に値上がりしていたが、ここにきて上昇ピッチが鈍っている。日本や米国などの増産で需給緩和感が台頭し、圧倒的な売り手優位が崩れてきた。

スポンジチタンは、大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの国内勢が合わせて世界の3割を生産する。両社の2008年の輸出価格は前年比10%の上げでおおむね決着。4年連続の上昇だが、毎年20―30%上がった過去3年と比べ上げ幅が縮んだ。

チタンは鉄より4割軽く強度は2倍。燃料を節約できるため航空機への採用が急速に進んでいる。中国やインドなど新興国の旅客増で航空機生産が増えたこともあり需要が急増し、価格高騰につながった。引き続き需要が強いなか価格に天井感が出たのは、供給が大幅に増えるからだ。

大阪チタニウムは09年、年産能力を従来より1万4000トン増やして3万8000トンにする。東邦チタニウムも同年、1万3000トン増の2万8000トンに引き上げる。米国の大手も生産設備を増強中。後発の中国メーカー各社も増産しているもようだ。

小幅な値上がりにとどまったものの、国内2社は納得顔。「もっと上げたかった」との声はない。高値により、調理器具やバイク部品など汎用品でチタン離れが進むことを懸念していたのだ。

「価格は09年に下がり始める」(業界関係者)との声もある。チタンの資源量は地下に埋蔵されている金属としては4番目。耐食性や耐熱性など機能面も申し分ない。本格的に値下がりすれば、身の回りでチタン製品を目にすることが増えそうだ。

2012年4月3日火曜日

出遅れのアルミ相場、年内に最高値も

非鉄金属の国際指標を形成するロンドン金属取引所(LME)で、銅など他の金属に比べ出遅れ感があったアルミニウム相場がじわじわ騰勢を強めてきた。原油高などによるエネルギー価格の上昇で生産コストが膨らんでいるほか、主要な供給国である中国が国内消費を急激に拡大、原料鉱石や地金を大量に輸入していることが背景にある。

指標となる3カ月先物相場は17日時点で1トン2439ドル。非鉄の騰勢が目立ち始めた2003年初めと比べ2倍近くに上がっている。ただ銅は約4倍、鉛は約6倍に跳ね上がっており、アルミの上昇率は相対的には低かった。

銅など上げ幅が大きい金属は原料鉱石の埋蔵量が限られており、需要増による需給の逼迫(ひっぱく)感が相場を押し上げてきた。これに対し、アルミ原料のボーキサイトは地球上に豊富に存在しており、需要が伸びても逼迫感は台頭しなかった。これが上値を抑えてきたが、今後は独自の強材料が相場に影響してきそうだ。アルミ精錬に必要な電力コストが大幅に上がっているのだ。

アルミは「電気の缶詰」と呼ばれるほど生産には大量の電力が必要で、コストの半分以上を電力が占めるとされる。原油高の影響で石油や石炭などエネルギー価格が軒並み上昇しており、つれて製錬所の電力コストも上がっている。一部の割高な電力を使っている製錬所にとって現状の相場はコストぎりぎりの水準といい、今後は電力コストが相場を押し上げる要因として意識されそうだ。

需要の伸びも強材料だ。主要生産国である中国では原料ボーキサイトも多く採れるが、国内消費の急増で原料輸入も増えている。05年は200万トン程度だったが、07年は2400万トンと10倍以上に拡大したもよう。08年も3000万トン近くに膨らむ見通しだ。中国は地金の輸入も増やす方針で、市場では「従来の輸出国から08年後半には実質的に輸入国に転じる可能性がある」との指摘も聞かれる。

アルミの過去最高値は06年5月の3310ドル。エネルギー高が長引けば、年内に同月以来となる3000ドルに乗せる可能性がある。材料次第では最高値を更新するとの見方もある。