2012年4月28日土曜日

化学肥料の硫安、原油高で一転「期待の星」に

スポーツウエアなどに使うナイロン繊維の原料カプロラクタム。原油から造る化学品の一種だ。原油の歴史的な高値水準が続き、製造コストは上昇している。しかしメーカーからは「原油高の恩恵も受けている」との声が聞かれる。

カプロラクタムを造る過程では副産物として硫酸アンモニウム(硫安)が発生する。硫安は代表的な化学肥料だ。原油高騰を受けて世界的に代替燃料のバイオエタノール需要が高まり、原料となるトウモロコシなど穀物の生産が拡大。つれて肥料になる硫安も「各国から旺盛な引き合いが来るようになった」(カプロラクタム大手)。

硫安の価格は上昇著しい。アジアでは1トン170ドル、南米では280ドルほどで取引されている。昨年は100ドル程度だった。カプロラクタムの4倍近く発生する硫安はかつては事業のお荷物。各社が硫安の出てこないプロセスを研究していたほどだ。しかし今や「収益への寄与は大きい」(宇部興産)といい、バイオ燃料をきっかけとした穀物ブームにより、状況は一変した。

カプロラクタム自体は、中国でナイロン製タイヤコードの需要が増え、11月の指標価格がアジア市場で過去最高水準となった。それでも増産の動きは少ない。建設資材の高騰もあって現在、12~15万トン級のカプロラクタム製造工場を造るとしても700億円近くかかり、「投資効率が悪い」(メーカー大手)からだ。

ワイシャツなどに使うポリエステルに比べて、ナイロンは市場の伸びが小さく、原料もあまり魅力的な製品として見られていない。結果的に硫安の供給増も見込みにくく、需給逼迫(ひっぱく)は当面続きそうだ。企業のコスト押し上げ要因になる原油高だが、一方では新たなビジネスチャンスも生み出している。

2012年4月12日木曜日

液晶テレビ、人気も価格も「32型」優位に

年末商戦の目玉商品となっている液晶テレビ。家電量販店の売り場ではいくつも並んだ大画面映像が人目をひき付ける。大型化による迫力映像への驚きが消費者の購買意欲を刺激して、市場が拡大してきた。ただ、最近は32型に人気が集中する一方、40型以上の売れ行きが伸び悩んでいる。液晶パネルメーカーがテレビメーカーに販売するパネルの価格も、32型が独歩高の様相を呈している。

32型パネルの大口需要家向け価格は現在、中心値が1枚332ドル。11月より2ドル上昇し、2006年12月以来の水準を回復した。4月以降、上昇基調が続いている。一方、42型は547ドルと前月比横ばい。10月に2ドル高くなったが、その後は上昇が続かない。

パネルメーカーの間では「32型の需要が強まっているのに対し、42型以上は動きが鈍い」(韓国のメーカー)といった声が聞かれる。シャープは従来42型以上のパネルを生産していた三重県亀山第2工場でも32型の生産を始めた。自社製品向けだけでなく、他のテレビメーカーへの外販も拡大している。

量販店の担当者は「住宅事情を考慮して、40型以上は置きづらいと判断する消費者が目立っている」(ヨドバシカメラ)と話す。世界的にも「北米市場のみ46型が人気だが、新興地域なども含めて売れ筋サイズは来年以降も32型」(調査会社のディスプレイサーチ)といった見方が有力だ。

新興地域の需要は特に低価格志向が強く、コスト競争力のある台湾パネルメーカーの優位性が強まりそうだ。一方、大型のガラス基板から40型や50型以上のパネル生産を想定した大規模な設備投資に動いたシャープや韓国サムスン電子などの大手にとっては「誤算」ともなりそうだ。40型以上のパネル生産に適した大型ガラス基板から32型パネルを生産すると、効率が落ちコスト増となる。
テレビの低価格化はさらに続くとみられ、大手各社は今後、事業採算やコスト競争力を維持する上で生産計画の修正なども迫られそうだ。

2012年4月10日火曜日

スポンジチタン、上昇鈍化の舞台裏

チタン製品の原料となるスポンジチタン。航空機向け需要の増加で大幅に値上がりしていたが、ここにきて上昇ピッチが鈍っている。日本や米国などの増産で需給緩和感が台頭し、圧倒的な売り手優位が崩れてきた。

スポンジチタンは、大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの国内勢が合わせて世界の3割を生産する。両社の2008年の輸出価格は前年比10%の上げでおおむね決着。4年連続の上昇だが、毎年20―30%上がった過去3年と比べ上げ幅が縮んだ。

チタンは鉄より4割軽く強度は2倍。燃料を節約できるため航空機への採用が急速に進んでいる。中国やインドなど新興国の旅客増で航空機生産が増えたこともあり需要が急増し、価格高騰につながった。引き続き需要が強いなか価格に天井感が出たのは、供給が大幅に増えるからだ。

大阪チタニウムは09年、年産能力を従来より1万4000トン増やして3万8000トンにする。東邦チタニウムも同年、1万3000トン増の2万8000トンに引き上げる。米国の大手も生産設備を増強中。後発の中国メーカー各社も増産しているもようだ。

小幅な値上がりにとどまったものの、国内2社は納得顔。「もっと上げたかった」との声はない。高値により、調理器具やバイク部品など汎用品でチタン離れが進むことを懸念していたのだ。

「価格は09年に下がり始める」(業界関係者)との声もある。チタンの資源量は地下に埋蔵されている金属としては4番目。耐食性や耐熱性など機能面も申し分ない。本格的に値下がりすれば、身の回りでチタン製品を目にすることが増えそうだ。

2012年4月3日火曜日

出遅れのアルミ相場、年内に最高値も

非鉄金属の国際指標を形成するロンドン金属取引所(LME)で、銅など他の金属に比べ出遅れ感があったアルミニウム相場がじわじわ騰勢を強めてきた。原油高などによるエネルギー価格の上昇で生産コストが膨らんでいるほか、主要な供給国である中国が国内消費を急激に拡大、原料鉱石や地金を大量に輸入していることが背景にある。

指標となる3カ月先物相場は17日時点で1トン2439ドル。非鉄の騰勢が目立ち始めた2003年初めと比べ2倍近くに上がっている。ただ銅は約4倍、鉛は約6倍に跳ね上がっており、アルミの上昇率は相対的には低かった。

銅など上げ幅が大きい金属は原料鉱石の埋蔵量が限られており、需要増による需給の逼迫(ひっぱく)感が相場を押し上げてきた。これに対し、アルミ原料のボーキサイトは地球上に豊富に存在しており、需要が伸びても逼迫感は台頭しなかった。これが上値を抑えてきたが、今後は独自の強材料が相場に影響してきそうだ。アルミ精錬に必要な電力コストが大幅に上がっているのだ。

アルミは「電気の缶詰」と呼ばれるほど生産には大量の電力が必要で、コストの半分以上を電力が占めるとされる。原油高の影響で石油や石炭などエネルギー価格が軒並み上昇しており、つれて製錬所の電力コストも上がっている。一部の割高な電力を使っている製錬所にとって現状の相場はコストぎりぎりの水準といい、今後は電力コストが相場を押し上げる要因として意識されそうだ。

需要の伸びも強材料だ。主要生産国である中国では原料ボーキサイトも多く採れるが、国内消費の急増で原料輸入も増えている。05年は200万トン程度だったが、07年は2400万トンと10倍以上に拡大したもよう。08年も3000万トン近くに膨らむ見通しだ。中国は地金の輸入も増やす方針で、市場では「従来の輸出国から08年後半には実質的に輸入国に転じる可能性がある」との指摘も聞かれる。

アルミの過去最高値は06年5月の3310ドル。エネルギー高が長引けば、年内に同月以来となる3000ドルに乗せる可能性がある。材料次第では最高値を更新するとの見方もある。