2012年6月13日水曜日

路線価:全都道府県で下落。港横浜、見えぬ未来。ビル建設、初の中断。

米国金融市場に端を発した世界的な不況が、日本の地価を押し下げた。4年ぶりの下落となった全国の平均路線価。マンションなどの販売不振が一層進んだ影響で首都圏では地価が落ち込み、販売会社や開発業者が倒産に追い込まれたり建設工事が中断する事態を招いている。一方、独自の街づくりに取り組む北海道の自治体では移り住む人が増え、路線価が上昇するという思わぬ現象も起きている。

5月末、埼玉県内の駅から徒歩12分の8階建てマンション1階に「会社更生法を申請しました」と紙が張り出された。4月に完成したが、112戸の1割以上が売れ残り「3LDK 2300万円~」と書かれた看板が立てかけられている。

入居した男性(60)は「守秘義務の念書を交わしたので詳しく言えないが、かなりの値引きがあった」と話す。しかし完売できず販売会社は破綻(はたん)。入居者の間に建物の維持・管理に対する不安が広がっている。同社が首都圏で建設中のマンションは、これ以外に約10棟あり、いずれも工事は中断している。

不動産経済研究所によると、首都圏の5月のマンション新規販売戸数は3538戸で、前年同月より19%も減った。契約率も前年同月を0・3ポイント下回る70・7%となった。不動産の価格データを提供する「東京カンテイ」(東京都)の中山登志朗上席主任研究員は「価格を下げても、郊外の物件は売れなくなった」と話す。

大型の開発工事もストップしている。横浜市の埋め立て地に広がる「みなとみらい21」。17階建てオフィスビルの建設が基礎工事を終えたところで中断している。建設を手がけていた東証2部上場の不動産会社が08年11月、金融機関の融資を受けられなくなり、破綻したためだ。約20年前に始まった一帯の開発で、工事が中断に追い込まれたのは初めて。

みなとみらい21の街づくりを企画する社団法人の担当者は「急激な景気後退が不動産業を直撃している」と危機感を募らせる。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、今年1~5月に倒産した上場企業17社のうち建設・不動産業は11社を占める。

高齢者定住で上昇-北海道・伊達

北海道伊達市。有珠(うす)山を望む内浦湾に面し「北の湘南」と呼ばれる人口約3万7000人の温暖な地方都市では、路線価が10%以上上昇した地点もある。

市の担当課によると高齢者に定住してもらう施策として、税金を投入しない民間主導で1回500円の乗り合いタクシーを導入したり食堂、共同浴場を備えた賃貸マンションを「安心ハウス」として認定したりする制度を創設。年間約2000人の転入があるという。安藤隆係長は「人口減や少子高齢化は避けて通れない。発想を変え、元気なお年寄りに定住してもらうことで活性化しようと考えた。人口増が路線価の上昇につながったのではないか」と話す。