2014年6月21日土曜日

公的年金制度の種類

物価スライドや賃金スライドの導入は、制度発足時には想定されておらず、積立方式では無理な仕組みです。この両制度の導入により、積立方式から、現役世代の保険料で年金受給者の年金をまかなう「賦課方式」への転換を行わざるをえなくなったのです。現行制度では、受け取る年金総額のうち、本人の積み立てた額(プラスその運用収入)は、約二割にすぎないといわれています。

公的年金制度は大きく二つに分かれます。サラリーマンなどの被用者(会社などに雇われて働く人)向けの厚生年金と農業者や自営業者などが対象の国民年金です。一九八六年の年金改正で、国民年金は厚生年金の一階部分と共通の基礎年金に再編成されました。厚生年金とほぼ同様の仕組みとなっているのが、公務員向けの共済年金です。

その他私学に勤務している人たちの私学共済など、共済年金は五つ存在しています。私学共済と農林漁業者共済は、有利な給付設計を独自で行うために、昭和三十年前後に相次いで厚生年金から分かれました。厚生年金の給付額が共済年金と比較してきわめて低かったからです。

わが国の一年金の大きな問題として、年金制度が分立していることがあげられます。自営業者と被用者と分立しており、さらに被用者の中でも五つの職域ごとに分立しています。年金制度は、加入から受給が終わるまでは六十年以上もかかる、超長期の制度です。長い間には、産業や企業、職業の盛衰が必ず生じます。国鉄がその代表例です。国鉄は国鉄一家ともいわれ、年金も独自の共済を持っていました。

モータリゼーションの進行で、国鉄の経営は大きく傾き、ついには民営化されました。国鉄共済も加入者の減少(従業員数の減少)と年金受給者の増大(退職者の増大)、さらには厚生年金よりも有利な給付設計などが原因となって、ついに年金財政は破綻。最初はNTTや専売公社(現JT)という昔の公共事業体仲間の共済に助けられましたが、それでももたなくなり一九九七年には三共済ともに厚生年金に統合されました。

2014年6月7日土曜日

足の病変(閉塞性動脈硬化症)

糖尿病患者の足には、動脈の狭窄あるいは閉塞(閉塞性動脈硬化症)が起こる頻度が非糖尿病者よりも明らかに高いといえます。閉塞性動脈硬化症の典型的初期症状は、足部に限局したしびれ感、冷感です。閉塞性動脈硬化症が進行すると、下肢運動時に疼痛を感じるようになります。これを間欠性数行といいます。この疼痛は、筋肉に十分な酸素が供給されないために起こる疼痛であり、歩行により誘発され休息により速やかに消失します。

日本では欧米に比べて、糖尿病患者での下肢動脈病変の合併頻度が低いのが特徴です。WHOがまとめた下肢切断、間欠性数行の発生頻度は世界平均で三・二%であるのに対して、日本では〇・五%と低率であり、多くが比較的軽症例です。

「血糖かコントロールできれば、糖尿病の合併症は予防できるのか」という大問題に結論を出すために、アメリカで一九八三~一九九二年にかけて大規模追跡調査(DCCT)が行われました。対象は三九歳までの1型糖尿病一四四一例、各群ほぽ同数ずつ強化インスリン療法群(一日二千四回のインスリン注射を行い、厳格な血糖ゴッドロールを行う治療法)と従来の標準的なインスリン療法群「通常療法群、一日一」一回のインスリン注射を行う治療法)に振り分け、平均六・五年)の経過観察を行いました。経過中の血糖コントロールは、通常療法群では糖化ヘモグロビンが連続的に九%前後であったのに対し、強化インスリン療法群では治療開始後二十六ヵ月以内に七・〇~七・二%に低下し、以後このレベルが維持されました。

その結果。強化インスリン療法は通常療法に比べて網膜症の発症危険度を七六%減少させ、網膜症の進行を五四%遅延させ、重症な網膜症への進展を四七%減少させることが証明されました。この大規模追跡調査により、血糖を厳格にコントロールすれば糖尿病合併症の発症予防および進展防止が可能であることがはじめて証明されました。

イギリスでは一九七七年から2型糖尿病を対象とした大規模試験(UKPDS)が始まりました。一九九一年までの間に二三の施設から新しく発症した2型糖尿病患者五一〇二例(平均年齢五三歳、白人八二%、平均空腹時血糖二〇七)が登録されました。三ヶ月間の食事療法後に空腹時血糖二七〇以下の症例を、従来療法群(一二一八例)と強化療法群(二七二九例)にわけて、平均一〇年間継続して治療しました。従来療法群では、食事療法から開始し、高血糖による症状がみられず、空腹時血糖二七〇以下を治療目標としました。