2012年4月10日火曜日

スポンジチタン、上昇鈍化の舞台裏

チタン製品の原料となるスポンジチタン。航空機向け需要の増加で大幅に値上がりしていたが、ここにきて上昇ピッチが鈍っている。日本や米国などの増産で需給緩和感が台頭し、圧倒的な売り手優位が崩れてきた。

スポンジチタンは、大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの国内勢が合わせて世界の3割を生産する。両社の2008年の輸出価格は前年比10%の上げでおおむね決着。4年連続の上昇だが、毎年20―30%上がった過去3年と比べ上げ幅が縮んだ。

チタンは鉄より4割軽く強度は2倍。燃料を節約できるため航空機への採用が急速に進んでいる。中国やインドなど新興国の旅客増で航空機生産が増えたこともあり需要が急増し、価格高騰につながった。引き続き需要が強いなか価格に天井感が出たのは、供給が大幅に増えるからだ。

大阪チタニウムは09年、年産能力を従来より1万4000トン増やして3万8000トンにする。東邦チタニウムも同年、1万3000トン増の2万8000トンに引き上げる。米国の大手も生産設備を増強中。後発の中国メーカー各社も増産しているもようだ。

小幅な値上がりにとどまったものの、国内2社は納得顔。「もっと上げたかった」との声はない。高値により、調理器具やバイク部品など汎用品でチタン離れが進むことを懸念していたのだ。

「価格は09年に下がり始める」(業界関係者)との声もある。チタンの資源量は地下に埋蔵されている金属としては4番目。耐食性や耐熱性など機能面も申し分ない。本格的に値下がりすれば、身の回りでチタン製品を目にすることが増えそうだ。