2012年5月10日木曜日

新潟コシヒカリ反発は選挙対策効果?

安値が続いていた2007年産の新米価格が上昇に転じた。特に昨年より安く出回っていた新潟産コシヒカリが、政府の備蓄米の買い入れ拡大を契機に、上昇に向かったことで、胸をなで下ろすコメ関係者も少なくない。

コメ価格センターが12月5日に実施した入札では、新潟産一般コシヒカリの07年産が60キロ1万9609円で全量落札された。落札価格は今シーズン初の上場となった10月17日より2837円(16.9%)高く、前年同期の06年産と比べても732円(3.9%)上昇した。

07年産米の値下がりへの対策として打ち出された11月末の政府の備蓄米買い入れ入札で、新潟産一般コシヒカリ6万2000トンが全量落札され、数量確保を急ぐ卸業者の買いが集まったことを映した。

今シーズン初の上場となった07年産の新潟産一般コシヒカリの入札の落札価格は1万6772円。06年産米の初回入札の1万8854円より2082円(11%)安かった。昨年に売れ残りが発生したため、産地が慎重になり、高い価格設定を避けたわけだが、市場では「新潟ショック」として一気に広がった。

多くの産地・銘柄米は新潟産コシヒカリ価格を上限のメドにして、数百―数千円を引いて値決めしている。

一方、下限のメドとされてきた北海道産きらら397の07年産は初回入札の価格が1万3387円で、06年産の初回入札時より87円(0.65%)上昇した。価格の割に食味がいいため、3―4年前から市場で人気が高まっており値段も上昇傾向にある。

今年は上限が値下がりし、下限が値上がりしたことで、価格帯が例年以上に狭くなった。新潟コシヒカリを指標としてきた産地は狭いレンジ内で、値決めせざるを得なかった。北海道産を始め青森県産など新潟産コシヒカリに比べ割安感を売り物にしていた産地では、お値打ち感を打ち出しにくくなった。

各地の銘柄米を並べるスーパーでは、「新潟コシヒカリが安いと、消費者には他産地のコメが割高に受け止められる」(都内のスーパー)というぼやきも出てきた。

ここにきて新潟産コシヒカリが上昇に転じたことで、「ようやく価格設定に柔軟性を持たせられるようになる」(都内のスーパー)と歓迎する向きが多い。

しかし、安値で出回った新潟産コシヒカリが上昇に転じたのも、政府の備蓄米買い増しという「カンフル剤」によるもの。今年7月の参院選で惨敗した自民党による農家への選挙対策の側面が強い。需給が緩めば価格が下落するという「市場のシグナル」を農家に認識してもらい、コメの生産調整につなげようとする流れには逆行するものだ。

はからずしも新潟産コシヒカリは価格の指標だけでなく、今年の備蓄米買い入れ効果の代表格にもなった。来年、生産調整に消極的になる産地が増えてもおかしくない。