2012年6月2日土曜日

金より急激、プラチナ値上がりのワケ

タンスの中で眠っていた宝飾品が高値につられて換金のために貴金属店に続々と持ち込まれている様子をテレビのニュースが報じていた。プラチナ(白金)が高値を追っている。金ほど派手なニュースにならないが、こちらの方が値上がりは激しい。

直近の高値は11月第2週に付けた1トロイオンス1483ドル。言うまでもなく過去最高値だ。この数年、もう天井と思われながら徐々に高値を更新してきた。

英国の貴金属会社、ジョンソン・マッセイ(ロンドン)が13日に発表した「2007年プラチナ需給の中間報告」を見ると、高値の要因は供給不足にあるようだ。中間報告によると、世界の需要は前年比6.1トン(2.9%)増の215.4トンに対し、供給は同4.1トン(2%)減の207.2トンと、8.2トンの供給不足になる見通しという。

06年は久しぶりに供給過多になったが、再び不足に転じる。最大の生産国である南アフリカの鉱山で生産障害が続いたためである。南アフリカの供給量は前年比2.1トン減の162.4トン。今年は賃金改定を巡る労働争議などのほか、鉱山での労働災害も多発し、大手鉱山で操業休止が相次いだ。

東京で記者会見した同社のレイナルド・オメーラ氏は、生産面の最大の問題として「鉱山技術者の不足」を挙げている。「10年に南アフリカでサッカーのワールド・カップが開かれるため、インフラ整備工事に技術者が取られている」とも言う。同氏が言うような一時的な要因だけなのかどうか。人材不足が南アフリカの問題であることはかねて指摘されている。

プラチナの最大の用途は自動車の排ガス触媒。131.7トンと年間需要の6割を占める。ガソリン車では価格の安いパラジウムへの代替が進んでいるが、ディーゼル車ではプラチナが欠かせない。必要不可欠な素材だけに、高値になっても需要はあまり影響を受けない。今後の排ガス規制の強化、ディーゼル車やハイブリッド車の生産増などがプラチナ需要の増加要因となるとも指摘している。

「向こう半年間で高値は1575ドルに達する可能性がある」と中間報告は予想している。脆弱(ぜいじゃく)な供給体制の下にあり、価格が上がりやすい貴金属であることは確かだ。