2014年6月7日土曜日

足の病変(閉塞性動脈硬化症)

糖尿病患者の足には、動脈の狭窄あるいは閉塞(閉塞性動脈硬化症)が起こる頻度が非糖尿病者よりも明らかに高いといえます。閉塞性動脈硬化症の典型的初期症状は、足部に限局したしびれ感、冷感です。閉塞性動脈硬化症が進行すると、下肢運動時に疼痛を感じるようになります。これを間欠性数行といいます。この疼痛は、筋肉に十分な酸素が供給されないために起こる疼痛であり、歩行により誘発され休息により速やかに消失します。

日本では欧米に比べて、糖尿病患者での下肢動脈病変の合併頻度が低いのが特徴です。WHOがまとめた下肢切断、間欠性数行の発生頻度は世界平均で三・二%であるのに対して、日本では〇・五%と低率であり、多くが比較的軽症例です。

「血糖かコントロールできれば、糖尿病の合併症は予防できるのか」という大問題に結論を出すために、アメリカで一九八三~一九九二年にかけて大規模追跡調査(DCCT)が行われました。対象は三九歳までの1型糖尿病一四四一例、各群ほぽ同数ずつ強化インスリン療法群(一日二千四回のインスリン注射を行い、厳格な血糖ゴッドロールを行う治療法)と従来の標準的なインスリン療法群「通常療法群、一日一」一回のインスリン注射を行う治療法)に振り分け、平均六・五年)の経過観察を行いました。経過中の血糖コントロールは、通常療法群では糖化ヘモグロビンが連続的に九%前後であったのに対し、強化インスリン療法群では治療開始後二十六ヵ月以内に七・〇~七・二%に低下し、以後このレベルが維持されました。

その結果。強化インスリン療法は通常療法に比べて網膜症の発症危険度を七六%減少させ、網膜症の進行を五四%遅延させ、重症な網膜症への進展を四七%減少させることが証明されました。この大規模追跡調査により、血糖を厳格にコントロールすれば糖尿病合併症の発症予防および進展防止が可能であることがはじめて証明されました。

イギリスでは一九七七年から2型糖尿病を対象とした大規模試験(UKPDS)が始まりました。一九九一年までの間に二三の施設から新しく発症した2型糖尿病患者五一〇二例(平均年齢五三歳、白人八二%、平均空腹時血糖二〇七)が登録されました。三ヶ月間の食事療法後に空腹時血糖二七〇以下の症例を、従来療法群(一二一八例)と強化療法群(二七二九例)にわけて、平均一〇年間継続して治療しました。従来療法群では、食事療法から開始し、高血糖による症状がみられず、空腹時血糖二七〇以下を治療目標としました。