2014年5月2日金曜日

モーゲージ・ローンの証券化

本来、住宅資金貸付は米国のS&L(貯蓄貸付組合)、相互貯蓄銀行、信用組合の専業である。家計の貯蓄性預金を吸収し、これを不動産(土地・家屋)抵当貸付、消費者金融などに運用してきた。

金利激変期には、ことに金利水準が高騰すれば、低利・長期の固定金利型ホーム・ローンを大量にかかえ、比較的高利の貯蓄性預金を積み上げている財務体質は、まずディスインターミディエーション(金利選好気運の上昇から貯蓄性預金の吸収難、はては預金の流出という事態)が広範に起こり、それをカバーしようとして外部の高利の市場性資金に依存することとなる。

また、外部金利に連動する貯蓄預金(一九七八年のMMC導入)を創設して預金流出を食いとめようとすると、原資のコスト高騰を招くこととなる。

こうして七〇年代末期には、S&Lの利益大幅低下、逆ザヤ現象が広く発生し、経営危機が随所にみられるようになる。このように、資産(貸出し)と負債(貯蓄預金)の金利のミスマッチ(非対応)、長期化した低利貸出しと短期化した高利の調達資金の期間的ミスマッチの拡大が進むため、それらの財務体質の改善・収益向上を狙って、これらの金融機関側からモーゲージ・ローン(Mortgage Loan)の証券化が進むこととなった。

すでに米国では不動産担保貸付金債権証書(日本の抵当証券と同種)は法律上、証券と認定され、譲渡可能性ある金融取引対象ではあったが、その専門性のため広範な金融取引物件とはなりえなかった。

一九七〇年に政府系金融機関であるGNMA(ジニー・メイと略称、政府国立抵当金庫)が初めてパススルー証書を発行し、広範な市場性ある担保抵当証書を開発した。

翌七一年、FHLMC(フレディーマックと略称、連邦住宅金融抵当公社)、八一年にはFNMA(ファニイと略称、連邦国立抵当公社)が相ついで、パススル証書を発行した。

これらの政府系機関発行の商品名は一般に、ジニーメイ・パススルー、フレディマックPC、ファニイメイMBS等と
呼ばれ、八六年三月末で合計、三、九二九億ドルの巨額に達している。他方、民間版も七七年にアメリカ銀行を第一号として続々と発行を行なっている。